純銅の種類とは
純銅として、電気銅(タフピッチ銅)、無酸素銅、脱酸銅があり、それぞれに特徴があります。したがって、その特徴を活かして利用することが重要です。
電気銅、無酸素銅、脱酸銅は三兄弟
純銅は電気銅*、無酸素銅*、脱酸銅*に大別されます。加工用純銅として電気銅が代表的ですが、このほかに無酸素銅、脱酸銅も加工用純銅として使用されます。鋳物用純銅としては鋳造性の観点から、ほとんど脱酸銅系が使用されます。
純銅の分類
電気銅
電気銅は粗銅を電解精製した電解銅を反射炉で溶解し、溶湯を調整して目的に応じた形状に鋳造したものです。つまり、電線用には慎形の鋳塊に、圧延用には板形スラブに、押出しや鍛造用には丸形ビレットに鋳込みます。電気銅は展延性に富み、電気伝導性、熱伝導性、耐食性に優れているために、板、線、棒、管、条として電気、機械、化学などの工業材料として多量に使用されています。
電解銅は粗銅を硫酸浴*(りゅうさんよく)で電解して得られるために銅の中にイオウが含まれ、純銅としての性質が損われます。そのため、まず酸化処理でイオウを取り除き、次いで過剰の酸素を松丸太などの投入によって還元し、酸素含有量を0.02~0.05%に調整してから鋳造します。これが電気銅となります。*電気銅:英名はエレクトロリティックカッパー(electrolytic copper)。精錬銅、タフピッチ銅(tough pitch copper)ともいう。
*無酸素銅:英名はオキシジェンフリーカッパー(oxygen free copper)。
*脱酸銅:英名はカッパー(deoxidized copper)。
このように、電気銅には微量の酸素が含まれ、これが銅の結晶粒界にCu-Cu2O系の共晶となって析出します。Cu0は母材が加工されると粒界や粒内に散在するようになり、塑性加工性が害され、仕上表面の光沢も悪くなります。一方、微量の酸素は銅に固溶*(こよう)している不純物元素を酸化物として析出させるために、電気伝導性を向上させる効果があり、電線などの導電性材料に適します。
電解銅の化学成分(mass%)
Cu | As | Sb | Bi | Pb | S | Fe |
99.96 | 0.003 | 0.005 | 0.001 | 0.005 | 0.010 | 0.01 |
*硫酸浴:1リットル中に約40gの銅を含む硫酸銅と、100~200gの遊離硫酸を含有する溶液。
*還元し:この操作をポーリング(poling)という。
*固溶:ある金属の結晶格子の中に他の金属原子が入り込むこと。侵入型と置換型がある。
無酸素銅
無酸素銅は真空溶解法、または水素や一酸化炭素などの還元性雰囲気溶解法などによって製造され、Cu20を含有しない純銅です。
無酸素銅には酸素がごく微量(0.002%)にしか含まれず、OFHC*と呼ばれて、高温で焼なまして極軟質にしたものの引張強さは約137MPaであり、電気銅の230MPaに比べてはるかに軟質です。オーディオ機器の配線回路接続などには無酸素銅が使用されます。
脱酸銅
脱酸銅は、リンなどの脱酸剤*を添加して酸素を除去した無酸素銅で、この場合は微量(0.01%程度)の添加元素が残存します。脱酸の作用機構は溶存酸素をリンなどの脱酸剤の酸化物にして除去することです。添加する脱酸剤の種類に応じてリン脱酸銅、ケイ素脱酸銅、マンガン脱酸銅などと呼ばれます。
リンは酸作用が大きいが、残存するリンは電気伝導度を著しく低下させる右害元素になります。ケイ素脱酸銅、マンガン脱酸銅は銅鋳物として多く利用されます。
*OFHC:oxygen free high conductivity copperの略。
*脱酸剤:溶融金属に含まれる酸素を除去するための元素。溶鋼に対するAI、Si、Ti、溶融銅に対するP、Mn、Siなどがある。