自動制御と中央監視設備工事

建物を効率的に運用するためには自動制御と中央監視装置はとても重要な役割を担っている。建物を人間の体に例えると,建築の臨体,内外装は骨,肉,皮膚など,空調,電気,衛生設備は血管,臓器など,そして自動制御や中央監視は神経や脳に例えられる。脳の役割を担う中央監視が体の状態を認識し,体の各部位へ指令を出しているため,建物の設計段階から,体の状態を検知するセンサをどのように設置するか綿密に計画することが,施設の効率運用の鍵となってくる。コンピュータ技術の進歩に伴い,複雑な制御プログラミングや,データ処理能力の高度化,通信速度の高速化であらゆる制御が可能になったが,基礎部分の理解なくして応用はできない。そこで本稿では,一般的な建物における基本的な自動制御と中央監視装置について説明する。

1.自動制御の基礎

自動制御の種類はいろいろあるが、建物の自動制御ではシーケンス制御、フィードバック制御の2種類が主に使用され、まれにフィードフォワード制御が使用される場合もある。また、自動制御の動作として代表的な二位置動作、比例動作、比例積分動作、比例積分微分動作などがある。これらの自動制御の基礎について以下に説明する。

1.1 シーケンス制御

シーケンス制御は、日本工業規格(JIS)の旧規格C0401に「あらかじめ定められた順序に従って、制御の各段階を逐次進めていく制御」と定義されている。
シーケンス制御では、次の段階で行うべき制御動作があらかじめ定められていて、前段階における制御動作が完了した後、あるいは一定時間を経過した後に次の動作に移行する場合や、制御結果に応じて次に行うべき動作を選定してから次の段階に移行したりするなど、動作条件が組み合わされている場合が多い。
シーケンス制御を空調設備の場合でみると、熱源機器の冷凍機、冷水ポンプ、冷却水ポンプ、冷却塔の間には一定の運転順序があり、それぞれが適切に連動しない場合は熱源システムの異常運転、強制停止などが働くことになる。また、ボイラなどの燃焼装置の始動に際しても同様である。
身近な例では、飲料用の自動販売機でお金を投入し、選んだ銘柄のボタンを押すと飲み物が取り出し口に出てくるといった一連の動作も、シーケンス制御が採用されている。何かしらの条件(トリガー)で次の動作が行われることも自動制御の一部にあたる。

1.2 フィードバック制御

フィードバック制御とは「フィードバックによって制御量の値を目標値と比較し、それらを一致させるように訂正動作を行う制御」と定義されている。
制御した結果を目標とする値と比較し、目標と結果が一致するまで反復して制御を繰り返す「閉ループシステム」を構成しており、“反省の機能”をもつ制御とも言われている。


この図は、一般的な空調機の室内(還気)温度による空調機制御の冷房時の図である。室内温度の目標値は28℃で、検出器の室温計測(還気)温度が目標値より高い場合、調節部からの指示により、操作部のバルブを開けて冷水を流すことで、制御対象の室温計測(還気)温度を下げる。また、室温計測(還気)温度が目標値に達すると過冷房にならないよう、調節部からバルブを閉じる命令が出る。このように、調節部で検出部の室温計測(還気)温度と目標値を比較し、目標値に達するまで操作部であるバルブを制御するループが繰り返される制御のことをフィードバック制御と言う。

1.3 フィードフォワード制御

一般に使用されているシステムのほとんどはフィードバック制御であるが、まれにフィードフォワード制御が使用される場合がある。フィードフォワード制御は「制御系に外乱が入った場合に、それが制御に影響を及ぼす前に先まわりしてその影響を打ち消すため、外乱を検出して必要な訂正動作をとる制御」と定義されている。外乱とは、制御系の状態を乱す外的作用を指し、気流、温度変化などがある。


この図は、ガス瞬間湯沸器の給湯温度を目標値として燃焼のガス量を操作部で制御している図である。目標値の給水温度は、水温計測でフィードバック制御されるが、フィードフォワード制御は、検出部で検知した水の流量情報を調節部に送り、目標温度に達するための燃焼に必要なガス量を予測して操作部へ出力している。たとえば、家庭で利用されているガス瞬間湯沸器は、台所の給湯と浴室のシャワー、浴槽への温水補給などと同時に使用すると一時的に水量が変化するため、外乱となる。その際、給湯温度がガスの燃焼をフィードフォワード制御することで、流量が少なくなるときは燃焼を抑え、流量が多くなると燃焼を高めるといった制御を行い、外乱を最小限に留めて目標値に近づけることが可能となる。

1.4 2位置動作(Onoffcontrolaction)

一般にオン・オフ動作といわれ、操作部が二つの位置(たとえば、開および閉)以外とれない動作である。操作部はこの設定された2位置を往復するため、制御対象は必ず一定の何も動作がないディファレンシャル(動作すきまとも言う)という状態をもっている。そのため、微細な制御を要求する装置や設備にはこの方式は不適当である。しかし、小規模な部屋の場合は2位置動作で十分である場合が多いため、しっかりと理解しておきたい重要な方式である。


この図は2位置操作の代表例である。サーモスタットと電磁弁を組み合わせた非常に簡単なシステムである。この動作は、冷房時にサーモスタットの温度が上昇すると接点が閉じ、電磁弁へ電流が流れ、電磁弁が開く。また、ディファレンシャル分温度が下がると、接点が開き、電磁弁が閉じる。


この動作の制御曲線の変化をこの図で示す。温度変化を模擬的に正弦曲線で示しているが、実際の変化の状態は若干異なるため注意を要する。システムに伝達遅れがあると図で分かるように実際に操作部が閉じても温度は上昇し、ある時間が経過してはじめてその効果で下がりはじめる。このようにサーモスタットのON、OFFを繰り返す動作をサイクリングと言う。このため、2位置制御を行う際にはサイクリングという欠点を許容しなければならない。サイクリングの周期は制御対象の応答速度(時定数の大きさ)とディファレンシャルの幅によって決定される。斜線部分は伝達遅れが大きくなると、その面積は大きくなり、制御振幅も大きくなる。

以上のように、2位置動作は、システムは簡単であるが、制御対象に常に一定の制御振幅があることが特徴である。

1.5 比例動作(P動作-Proportionalaction)

2位置動作の制御振幅を改善する方法として、操作量を0%と100%の二つの状態だけではなく、ある範囲内の制御量の変化に応じて、0~100%の間を連続的に変化させるように考えられた動作が比例制御である。


この図は、冷房時の冷水バルブへの比例制御出力のシステム図と制御量のグラフである。操作量100%に対して比例帯を2°Cとして温度設定値を26°Cとした場合、室温が27°C以上で冷水バルブの開度は100%になる。室温が設定値と同じの場合は、50%出力となる。

比例動作のみの場合、この図のように定常状態に入ると目標値に対しオフセット(定常偏差)が発生する。このオフセットは制御対象への外乱や制御機能の特性により生じるもので、比例帯が小さい場合オフセットは小さくなるが、操作部(バルブなど)の動きは激しくなり、非常に不安定になる。比例帯を大きくすると、同じ負荷変動に対して操作部の動きは小さくなり、制御性は安定してくるが、オフセットは大きくなる。比例制御は負荷の変動があった場合でも安定した制御は得られるが、負荷によって制御点が変化する。比例帯とは、負荷の要求するプロセスを安定させる妥協値(目標値+オフセット)を調整するものである。

1.6 積分動作(I動作-Integralaction)

積分動作は、比例動作で生じるオフセットを解消するための動作である。この図のように、偏差Z相当に必要な時間が積分時間として設定される。積分時間を短く設定すると過剰修正となり、設定値を挟んで温度が上下する「ハンチング」が発生する可能性がある。また逆に長く設定すると、偏差解消までの応答性は悪くなる。

1.7 微分動作(D動作-Derivativeaction)

フィードバック制御で多く用いられるのは、これまで説明した比例積分制御(PI制御)である。圧力制御など、計測値の変化で操作量(偏差)が大きく変動するような場合は、微分動作を加えた比例積分微分制御(PID制御)を利用する。微分動作をこの図に示す。微分動作は操作量が偏差の微分値(変化速度)に比例する動作である。
先行し出力することにより偏差の変化模様を見越した修正動作を可能とし、過渡特性を速く安定させる効果がある。微分時間とは一定速度で変化する偏差を与えたとき、P動作による変化分とD動作による変化分が等しくなる時間を言う。微分動作は微分時間が大きいほど強く、小さいほど弱くなる。微分動作は圧力制御などの応答性の速い制御系に有効であるが、微分時間が大きすぎると制御系の安定性を害することになるため注意する必要がある。

2.フローシート(計装図)

建築工事では、設計図、施工図を主たる図面として施工を行うが、自動制御工事ではそれらに加え、自動制御機器と制御内容を記述したフローシート(計装図)を作成し、制御信号の行き先や電気設備の動力盤との連携などを表現する。
発注者の制御仕様を十分理解して作られ、空調設備が実運用された際にビル管理要員が制御点検時に活用できる図面となっている。

2.1 フローシート(計装図)の読み方

この図はDDCコントローラで行う空調機のフローシート(計装図)である。制御を行うコントローラと対象となる入出力機器を破線で結び、制御システムの構成が分かるように記載している。通常は図面に制御内容を記述するが、紙面の都合上制御内容を本文に記載し、フローシート上の対象機器記号を合わせて記載した。

■制御内容

【1】室内温度制御1.1)室内温度(THE1)が設定値となるよう冷温水2方弁(MV4)の比例制御を行う。
【2】室内湿度制御(暖房期のみ加湿)
1)室内湿度(THE1)が設定値となるよう加湿2方*弁(BV)の2位置制御を行う。
2)暖房運転時のみの制御とし、冷房運転時は加湿2一方弁(BV)を全閉とする。
【3】ウォーミングアップ制御
1)空調機起動時、タイマにより一定時間、外気取り・入れを禁止
(外気取入ダンパMD1を全閉、還気ダンパMD2は全開、余剰排気ファン停止)とする
2)ウォーミングアップ中は加湿禁止(加湿2方弁BV1を全閉)とする。
3)ウォーミングアップ完了時、還気ダンパ(MD2)
を2位置制御する。
【4】ファンインターロック制御
1)空調機停止時、以下の状態になるよう空調機とのインターロック制御を行う。
① 冷温水2方弁(MV4)全閉
② 加湿2方弁(BV)全閉
③ 外気取入ダンパ(MD1)全閉
④ 還気ダンパ(MD2)全開
⑤ 余剰排気ファン停止

制御内容に記述していないが、破線の対象信号であるフィルタ差圧警報(PdS1)、リレー接点入出力(R)もDDCコントローラに含まれる信号である。
また、制御信号の入出力をDo、Di、Ao、Aiで区別している。それぞれの用途については、この表を参照のこと。

3.自動制御盤と動力盤の仕様確認

起動時や運転時に大きな電力を必要とする冷凍機、ポンプ、空調機ファンなどは多くの場合、電気設備の動力盤からそれぞれに電源が供給されている。自動制御では、それらの起動/停止をシーケンス制御のようなある条件の下で動作することもあれば、空調負荷の変動に対応するように制御プログラムを作成して冷凍機運転台数の増減判断を行い、それぞれの冷凍機に起動/停止命令を出すこともある。これら自動制御盤からの起動/停止命令を接点で動力盤へ伝達し、動力盤回路により、設備の起動やモータへ電力を供給している。
本項では、自動制御盤と動力盤のシーケンス回路による起動/停止について解説する。

3.1 自動制御盤(CP盤)のシーケンス回路

この図のシーケンス回路は、自動制御盤で組まれる空調機ファンの起動/停止、状態、故障、インバータ(INV)異常の各種接点を表している。中央監視装置などから空調機の起動命令が発行されるとCP盤のCX11が作動し、停止命令ではTX11が作動し、それぞれ無電圧接点にて動力盤に伝達する。CXはClose(接点を閉じる)を表し、
リレーのa接点(電気が流れるよう接点がオンになる)と
して使われ、TXのTはTrip(接点を開く、引き外す)を
表し、リレーのb接点(電気が流れなくなるよう接点がオフになる)としてこのような回路図で使われる。また、動力盤からは、空調機の運転状態が52X11、故障が51X11、INV異常が30X11の無電圧接点で送られ、CP盤内で補助リレーを使い接点増幅し、自動制御入出力モジュールのDi(デジタル入力)として入力されている。また、このシーケンス回路には、空調機が起動した際に状態信号52X11を認識し、外気ダンパを「開」にするインターロック回路も組み込まれていることが回路図から読み取れる。

3.2 動力盤のシーケンス回路

この図は、動力盤内の空調機の起動/停止シーケンス回路を表している。一般的に中央監視装置などから遠隔で空調機を起動/停止する際は、手動/切/遠方の切替えモードスイッチが動力盤前面に設けられている。これは、メンテナンス作業などで空調機の誤作動防止対応や、中央監視装置、自動制御回路の故障など、手動での起動/停止が必要な際に使われるが、平常時は遠方モードで運用する。空調機の自動制御盤からの電気信号は、3.1図の起動CX11、停止TX11の動作した接点が、遠方モードの回路(図中の破線で囲まれている箇所)で構成され、動力盤側1X11の起動/停止条件を成立させることを表している。
ここまで、無電圧接点にて動力盤との取り合いを解説したが、電気設備業者、自動制御業者との仕様決めの際は、これら電気信号を必ず盤製作前までに両者で確認し、盤図承認を受けることで、盤搬入後の無駄な改造工数がなくなることを認識する必要がある。

4.中央監視装置

中央監視装置は、建物内の主要設備の起動、停止操作や現在状態を効率よく監視、管理し、ビルのオペレーターの。負荷軽減はもとより、IT技術の革新でさまざまな設備との連携やモバイルデバイスによる遠隔管理、建物内設備の計量、計測データの一元化によるエネルギー管理など、建物の最適運用が可能となる。
本項では、ジョンソンコントロールズ社「Metasysビルオートメーションシステム」を題材に、中央監視装置システム構成と建物内設備の連携について解説する。

4.1 中央監視装置システム構成

この図は中央監視装置システムの構成図である。受変電設備、空調設備、熱源設備、給排水衛生設備の監視は、スーパーバイザリーコントローラ(NAE:ネットワークオートメーションエンジン)にて監視・管理し、防犯設備、防災設備、照明設備は多様なベンダーのサブシステムを通信で統合したシステム構成になっている。中央監視装置に表示するグラフィックや各種データはNAEで管理しており、汎用技術のWebアプリケーションを利用し、パソコンでリアルタイムに表示することが可能となっている。NAEはこの図のように設備ごとに配置することで、万が一、通信異常などが発生しても、その設備単位で完結した制御を行うことができ、危険分散したシステム構成で運用できる。
また、NAEのローカルで管理する空調機単体や熱源システムでは、FEC(フィールドエンジニアリングコントローラ)に自動制御プログラムが組み込まれ、機器単位での自律分散制御を行うことが一般的である。サブシステムは、それぞれのメーカーが得意とする設備の管理を行うが、オペレーター操作の一貫性を図る目的で、サブシステムの情報を中央監視装置で表示させるためには、通信仕様を両者で確認することが必要となる。

この図のようなクローズドシステムでは、それぞれのメーカー独自の通信仕様があり、G/W(ゲートウェイ)などのインタフェース装置が必要で、コストがかさむが、Metasysビルオートメーションシステムのように相互接続性が確保されたBACnet通信対応のオープンシステムは、通信仕様が標準化された機器を使用することでインタフェース装置が不要になり、中央監視装置とシームレスに接続できるため、統合的なビル設備管理が容易に可能となる。

4.2 中央監視装置表示画面

近年、各設備の現在状態を表示する場合、直観的に把握できるグラフィック画面が多く使われている。この図では、空調機ファン運転状態や、室内に送風される給気温度計測値、室内から戻る還気温度計測値などを表している。オペレーターは定常状態の確認を常に行い、あわせて居室内から室内環境の改善要求があった場合、該当する系統のグラフィック画面を表示して空調機ファンの状態や温度計測値を確認し、設定変更や機器の異常を即座に見極めることができる。
また、この図は、電力会社の高圧線から建物に引き込む受変電設備の電力スケルトンをグラフィック化したものである。これは、3カ所の高圧線から受電するスポットネットワークのシステムで、受電状態や受電電力量、力率、有効電力、無効電力の計量を表示し、各電気設備の遮断、投入の状態表示などが一目で分かるよう構成している。これらのグラフィックの元図になるのは、各設備設計図の抜粋や、自動制御図面のフローシートで、これらを利用して監視、管理するデータを直感的に把握できるよう配置することで、オペレーターが対応を容易に判断できるようにする。

4.3 各設備との連携制御

中央監視装置では、電気設備と空調設備、防災設備と空調設備、防犯設備と照明設備など、各設備間の連携制御が行えるよう必要なポイントデータを監視・制御している。今回は、電気設備と関連のある空調設備および防災設備の連携制御についてフローチャートを使い解説する。空調機の起動・停止は、多くはスケジュール制御により実施するが、建物が停電した際や火災が起きたときの異常時などでは、決められたシーケンスで制御される。また、中央監視装置を設置する建物では、電力会社と契約電力を結ぶが、デマンド値(最大需用電力)を超えないような制御が求められる。これらについて以下に説明する。

4.3.1 停電、復電制御

停電制御は外部電源が喪失しているため、不足電圧継電器信号(27X)が動作する状態と建物に設置している自家発電機の電圧確立信号(52G)が動作する条件を満たしたとき、停電状態でも起動が必要な重要機器に対して、運転指令を実行する。たとえば、24時間稼働のサーバルームや病院などのクリティカルな施設や機器に対して命令を実行する。
注意しなければいけないケースとして、まれに設備機器には非常用電源を供給し、制御回路が働く自動制御盤に非常電源や無停電電源装置(CVCF)を供給しないケースがある。このような場合には、事前にどの機器を停電時に起動させるかを決め、制御盤へ非常用電源を供給することが重要である。
また、復電制御は、不足電圧継電器信号(27X)が動作するような瞬時停電後の機器の再起動に有効な制御である。商用電源が復旧後、不足電圧継電器信号(27X)は解除されるが、ビル設備全体への電源供給および自動制御システムの再起動にかかる時間を確保するための条件(この図の“タイマまたは他のトリガー”)を加え、各設備の復電制御処理が実施される。復電指令により、空調機や照明を順次起動するが、その際、対象の機器があらかじめ設定したスケジュール時間内か判断し、起動指令を実行する。これは、スケジュール時間外の場合は、無用の機器の起動をさせないためである。

4.3.2 火災時一斉停止、復旧制御

防災設備による火災発生時の制御は、消防法により基本的に電気回路で組まれるケースがほとんどである。空調設備との連携は、中央監視装置と自動制御のコントローラで行う。平常時の空調機は室内の換気を目的に新鮮な外気を取り入れて空調するが、火災発生時、空調機が平常時の運転と同じでは、火災箇所に酸素を供給することになり、さらなる延焼を加速させてしまう。空調機から酸素を供給しないようにするために、火災信号が発報するとそのエリアの空調機を停止させる。これが火災時一斉停止制御である。
火災時復旧制御は、すべての火災信号が復旧した際に、オペレーターによる一斉停止の解除操作が行われ、あらかじめ設定された復旧時の動作で停止した機器を操作する。

4.3.3 電力デマンド監視制御

電力会社の取引用電力量計から発信されるパルスを取り込み、電力会社が計量しているサイクルに合わせて、30分間(毎時ごとの0~30分、30~60分の30分間)の平均デマンド値(最大需用電力量)を監視し、目標デマンド値を超えないよう制御を行う。この図は、電力デマンド監視グラフの例である。デマンド時限30分間の中で、現在時刻までの現在電力から予測電力を算出し、目標電力を超えそうな際に警報を出し、超過予想分を調整電力として、あらかじめ設定された機器に対し、調整分に見合う空調機の号止や出力の制限をかけて使用電力を削減する。

おわりに

自動制御と中央監視装置は、電気設備をはじめ、建物のあらゆる設備機器の監視や、各設備間の連携制御を行っていることを理解いただけたと思う。工事や請負区分が異なるケースもあるが、それぞれの機器の接続については、本稿で解説した自動制御・中央監視工事に関わる基礎をしっかり理解したうえで、図面や仕様書を確認することが重要となる。また、関連業者との綿密な打ち合せにより、お互いの認識のずれを整理、修正することで建物内の設備をシームレスに接続し、利用者満足度の高い室内環境を実現することができる。
自動制御と中央監視装置は研修だけですべてを理解できるわけではなく、現場を数多く経験することで、確実な知識が備わるものである。

一般社団法人日本電設工業協会発行「電設技術」第65巻 No.797より抜粋